共感されるパフォーマンスと独りよがりなパフォーマンスの違いとは




演技、歌、ダンスなどのパフォーミングアーツを志す者にとって、「人の心を打ち、惹きつけ、共感を得られる」パフォーマンスとは何か、というのは永遠のテーマだと思います。

そしてこれは、定義や言語化が非常に難しいテーマでもあります。
データや「正しい・正しくない」などで簡単に決めていくことが極めて困難なワークだからです。

しかし、観客は逆です。
多くの人が歌や演技などを観た時に、
『なんか魅力的で好き。惹きつけられ、共感し、応援したくなるパフォーマー』
『なんか面白みがない。惹きつけられなくて独りよがりなパフォーマー』
について同一見解を持ちます。

では、人がどんな人を見た時に共感し、惹きつけられ、愛し、応援したくなるのか。
逆にどんな人を見た時に独りよがりだと感じるのか。

深く研究が進んでいるコミュニケーション力学や人間の行動科学の観点を応用し、
この定義の難しい『共感される魅力的なパフォーマー』になるための原則を紹介していきたいと思います。

俳優、歌手、ダンサー、お笑い芸人その他表現者ならだれもが持っておくべき観点について学んでいきましょう。

共感されるパフォーマンスと独りよがりなパフォーマンスの違いとは

 

パフォーマンスのゴールを設定する

あなたの表現に、追いかけるべきゴールは存在していますか?
そのゴールを達成するための葛藤や障害を乗り越え、チャレンジしていますか?

誰しも「何らかの目標・目的をがむしゃらに追いかけていた時間は短く感じた

という経験をお持ちだと思います。

これは、がむしゃらに熱中している本人だけではなく、その様子を見ている観客も同じです。
したがってパフォーミングアーツにおいても、あなたがパフォーマンスの中で何かをがむしゃらに求め、心から時間を忘れていると感じているときにのみ、観客もその一挙一動に惹きつけられ、熱狂し、時間を短く感じているでしょう。

これはパフォーマンスに限らない人間心理としての事実です。
何かに取り組む時に、目的・目標をしっかりと定めて行うことが非常に重要であり、見る人を自然に惹きつけるということです。

例えば、
・何度も失敗して膝をすりむいても立ち上がり自転車の運転をマスターしようとする子供の姿に誰もが心打たれ、応援します。
・強い相手にひるまず立ち向かい、あらゆる手段を駆使して勝利を目指すアスリートの姿に観客は応援し、時に熱狂します。
・生まれてから転んでも転んでも立ち上がろうとする小鹿を、誰もが手に汗を握って応援します。

このように、どのようなジャンルでも、また主体が動物であっても、明確な目標を追いかける姿は人の心を掴み、夢中にするのです。

心から渇望された明確なゴールあるかないかで、あなたのアートの熱量はまったく違うものになってきます。

”感情”を活用して表現にパワーを与える

では、あなたの活動に熱中とがむしゃらさを生むものとは、具体的には何でしょうか。

結論から言うとこれは感情です。

この感情が葛藤や逆境を乗り越える力強さ、人を惹きつける魅力を作っていきます。

魅力的なパフォーマンスは、あなた自身を掻き立てる強い感情のスイッチをコントロールし、その世界に熱中することで得られます。

逆に、テクニックを見せびらかすことでは決して人々を魅了し、共感を得ることはできません。

人間を惹きつけるマーケティングの多くには優れた「ストーリー」がありますが、その多くはこの「あなた自身を強く掻き立てる感情のスイッチ」にフォーカスを当てています。
観客はこれこそが人に、大きな決心をさせ、葛藤や逆境をも乗り越える人間らしい強さをもたらすことを本能的に知っているからです。

芸術が理性的な産物であることは極めてまれであるという事実を認識しなければなりません。

もちろん、表現の基礎的なスキル習得の段階では理屈から理解することが必要ですし、
表現にはそれを支える論理的な「フレームワーク」のレッスンが常に必要です。

しかし、最終的にそれをあなたの表現とし、さらに人々の心を巻き込んでいく核となるのは、感情の部分なのです。

なぜなら、芸術が「理性」のみで創作できるのだとしたら、人間がやる意味もないし、あなたがやる意味もないからです。AIがやればいいということになってしまいます。

エンターテインメントがAIが発達する時代に強みを持つと言われているのはこういう要因が色濃いからでしょう。

事実、感情を伴わず、理性的、常に正しく機械的にやるという内容の仕事は、どんどんAIが担っていく時代になっています。すでに大企業でもその足音が大きくなっているのは皆さんもご存じのとおりです。

「あなた」が表現をして誰かの心を惹きつける、共感を得る、感動してもらう。
その核を担うのは間違いなくあなたの感情をパワーに変え、効果的にコントロールしていく術を知ること
です。

あなたの感情を強く揺さぶるスイッチを知る為に、表現者は自分という存在を理解していく姿勢が必要です。

観客の心が離れる瞬間とその解決策

逆に、観客の心が離れてしまう”失敗”の瞬間がどんな瞬間なのかを言語化することも、パフォーマンスの質を高めていく上で非常に有効です。

なぜならそのケースに陥ってしまったときにすばやく軌道修正ができるからです。

感情のスイッチを自ら理解し、ゴールを熱狂して追いかける。
上述のこの一連の行為がパフォーマンスに芸術性を与えます。
観客を惹きつけ、演者を応援するようになります。

この成果を追いかけていく中で、よくある失敗を紹介します。
観客の心が離れる瞬間は、以下のようなものがあります。
これはそのまま、独りよがりなパフォーマンスんも特徴でもあります。

・訓練不足による未熟さ、不安、自意識が見える
・感情的な熱中よりも技術を見せびらかすことが優先して見えてしまう
・感情を発散するだけでコントロール出来ていない
・弱みをさらけ出せておらず、そもそも乗り越える葛藤が存在しない

などがあります。

訓練不足による未熟さ、不安、自意識が見える

これはシンプルで、「スキル不足・練習不足」のケースです。

こういったケースの解決策は「努力の基準を変えること」です。
なんでも目標達成をしたいのならば忍耐力を持って努力をする覚悟を持つ必要があると受け入れましょう。

当然観客はパフォーマーが練習不足の不安そうな状態で自分の前に出てきてパフォーマンスされても応援のしようがありません。

自分が取り組む芸事についての基礎技術を真摯に習得する必要があります。
韓国のアイドルは人前に作品を出すまでに同じダンスの振り付けを100回は繰り返し訓練すると言います。

あなたのスキルに自信が持てないとしたら、絶対的な練習の”量”がそもそも足りていないということはないでしょうか。
回数の中で、努力の質も徐々に洗練されてきます。
リハーサルをいくらしてもリハーサルをしすぎるということはありません

不安がなくなるまで忍耐力を持って練習するという覚悟を持たなければなりません。

感情的な熱中よりも技術を見せびらかすことが優先して見えてしまう

承認欲求が強すぎて表現に入り切れていないケースです。
(表現者には非常に多いのでこのこと自体に落ち込むことはありません)
こういったケースの解決策は「作品の中で追いかけるゴールのみに集中すること」です。

自分自身への愛ではなく、あなたが行う芸術への愛へフォーカスを変えるべきです。

パフォーマンスそのものへの敬意・愛がそこにしっかりとあれば、あなたのパフォーマンスが独りよがりになることはありません。

あなたへの自意識が強くなった時に観客の心が離れるのです。

観客は
パフォーマーの豊かな世界観に浸りに来ています。
葛藤を克服し大きなゴールにチャレンジをしている様子を観に来ています。
あなたのスキルは「手段」であって、「目的」ではありません。

したがって、「自分が認められるか」という不安を作品中の表現するべき葛藤に置き換えていきましょう。

これは自分が客席にいるときのことを思い返せばすぐに理解できます。

・非常に高い歌唱力という手段を使って、曲に込められた世界の感情を表現しているシンガー
・非常に高い歌唱力の発声技術という目的を、観客に認めてもらうために歌っているシンガー

どちらのシンガーに惹きつけられ、応援したくなるかはだれの目にも明らかだと思います。

あなたが表現する作品の内容に存在する目的を追いかけることに集中しましょう。

感情を発散するだけでコントロール出来ていない

自分の世界に入りすぎて表現としてのバランスを欠いているケースです。
こういったケースの解決策は「葛藤と戦い、打ち克とうとすることに集中すること」です

感情はただ動かして発散すればよいわけではありません。
もちろん喜怒哀楽が激しく動くその感受性は素晴らしい武器になります。

感情のスイッチを知り、情感豊かに表現をすることは芸術を高みへと連れて行ってくれます。

ただ、上述の芸事のスキルと同じく、感情も”目的”ではなく”手段”なのです。
失恋の曲をただ号泣しながら歌われてもリアクションに困ってしまいますよね。
涙は愛する人を強く思った”結果”出てくるものです。
もっと優先順位の高い上のステージのゴールがあるはずです。

これも例を思い浮かべればすぐに理解できることです。
あなたがテレビドラマの子役の演技を観ているとします。

・「悲しみ」を受け入れたくないが、泣くのを我慢したいが溢れる涙を押さえられない子役
・「悲しくて泣いている」感情の再現に没頭し、ひたすら泣いている子役

前者は大きな葛藤と戦いチャレンジしており、観客の心を打ちます。
後者はチャレンジの要素は一切なく、ただ悲しみの感情を垂れ流しているだけです。

これではプロの演技とは言えません。
人の心を打つのは、リアルさではなく人が大きな壁にチャレンジしている姿です。

弱みをさらけ出せておらず、そもそも乗り越える葛藤が存在しない

「よく見られたい」というプライドが邪魔して芸術的な表現が出来ないケースです。

こういったケースの解決策は、「自分を客観的に分析すること」です。
具体的には、あなたを動かすプライド、怒りのツボ、コンプレックス、トラウマ、恐れていること、生きていて耐えられない瞬間について真剣に考え、自分自身を知ることです。

この部分こそがあなたと他の人との違いを決定づける要素であり、個性になります。
あなたは自身の弱さ、コンプレックスといったものに正面から向き合っていますか?

このプロセスがない人の表現には「強い感情を伴った人間らしいチャレンジ」の要素が欠けてしまいます。

実生活でも、常に安全なところでミスをしないようにして自分を守って来たような人より
リスクを取って自分が想像もつかない経験をしてきた行動力のある人の方が面白いと感じますよね。

もちろん、最終的に観客の前に出す作品はお見せするに相応しい形に微調整する必要はあります。
ただ芸術を作る核の部分は、あなたのキレイな部分ではなく、あなたの根にある、人に言えないようなダークな部分であることが非常に多いです。

自分の弱みやコンプレックスに謙虚に向き合えば向き合うほど、あなたの芸術的表現はスケールが大きくなります。

上述してきたようにゴールに向かいがむしゃらにチャレンジする姿は人の心を惹きつけます。

あなたが非常に技術の高いダンサーのショーを観に行ったとします。

・常に自分の”出来ないこと”に目を向け新しいチャレンジをし、表現の幅を広げる努力をしているダンサー
・「自分はコンクール入賞の優れたダンサーだから」と、今の自分を認めなさいという態度のダンサー

観客がどちらに惹かれるかは明らかです。
どんな仕事にも言えることですが、人の心を打つパフォーマンスには、
「現状に満足せず成長していきたい」という挑戦者のメンタリティが必ずあります。

パフォーマンスに向き合うマインドの持ち方

これまでの項目すべてに共通する唯一つのことは、「チャレンジをしよう」ということです。

チャレンジし続けるということは非常に苦しいことではあります。
しかし、自分自身と向き合い、常にチャレンジャーでいることは人生に無限の可能性と豊かさをもたらしてくれます。

そしてあなたのパフォーマンスを必ず魅力的にしていってくれます。

「これで正しいかどうか」
という視点ではなく、
「よりよくなるためにはどうすればよいのか」
に集中しましょう。

高いところに目標を置きましょう。

正解はありません。

今の自分で完成・正解

と思ってしまった時点であなたの表現は芸術ではなくなります。
誰もあなたの表現の承認欲求に付き合いたくはありません。チャレンジが見たいのです。

常に高いゴールを追いかける謙虚な挑戦者の姿勢。
これを楽しめる真の表現者を目指していきましょう。




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